ダイビングのハンドシグナル一覧|忘れがちなサインと水中コミュニケーションのコツ
ダイビングのハンドシグナルは、水中で唯一確実に使える「言葉」です。最低限おさえるべきサインは「OK」「問題あり」「浮上」「潜降」「残圧はいくつ?」「エアがない」の6つで、これに残圧の伝え方の取り決めを加えれば、たいていの状況はカバーできます。この記事では水中サインの一覧を表で整理し、忘れがちなサインや混同しやすいサイン、初対面のバディと潜る前のすり合わせ方まで解説します。
この記事でわかること
- ダイビングの基本ハンドシグナル一覧(水中・水面)
- OKと浮上など、混同しやすいサインの見分け方
- 残圧サインの流派の違いと、バディと事前に決めておくべきこと
- ナイトダイビングのライトシグナルと、サインが伝わらないときの対処法
なぜダイビングではハンドシグナルが命綱なのか
水中ではレギュレーターをくわえているため声が出せず、マスク越しでは表情もほとんど読み取れません。バディに「残圧が少ない」「耳が抜けない」「この先に進みたくない」と伝える手段は、基本的にハンドシグナルだけです。
とくに重要なのは、サインが「伝わらなかった」ときの代償が大きいことです。逆に、バディが「浮上したい」と言っているのに「OK」と誤解してそのまま進めば、バディを見失う原因になります。
ダイビングの基本ハンドシグナル一覧(水中サイン)
まずは水中で使う基本サインです。講習団体によって細部が異なることもありますが、以下は広く共通して通じるものです。
| 意味 | サインの出し方 | ポイント |
|---|---|---|
| OK/大丈夫? | 親指と人差し指で輪を作り、他の指を立てる | 質問にも返事にも使う。聞かれたら必ず返す |
| 問題あり/大丈夫じゃない | 手のひらを下に向けて左右に揺らす | この後に「どこが」を示す(耳、胸など) |
| 浮上 | 親指を立てて上に向ける | 「OK」ではない。返事は同じ「浮上」で返す |
| 潜降 | 親指を立てて下に向ける | 潜降開始の合図。バディと目を合わせてから |
| 停止/待って | 手のひらを相手に向けて開く | 流れが変わったときや、何かを見つけたときに |
| 残圧はいくつ? | 人差し指と中指をそろえ、反対の手のひらを叩く | ゲージを指す動作を加えるとより確実 |
| 残圧の伝え方 | 片手で10bar単位を指で示す、両手で数を示す、指を胸に当てるなど複数の流派あり | 事前にバディと取り決める(後述) |
| エアがない | 手のひらを下に向け、喉を横に切るように動かす | 緊急サイン。見たら即座にオクトパスを渡す |
| エアをくれ(オクトパスをくれ) | 手を口元に持っていき、前後に動かす | 「エアがない」とセットで覚える |
| 耳が抜けない | 耳を指さした後、「問題あり」のサイン | 少し浮上して耳抜きをやり直す |
| 寒い | 両腕で自分の体を抱えるように震える動作 | 寒さはエア消費増加や判断力低下の原因。早めに伝える |
| 方向(こっちへ) | 手のひらを揃えて進行方向を指す | 人差し指1本より手全体のほうが見えやすい |
| 一緒にいて(バディで) | 両手の人差し指を並べて立てる | 離れそうなときに。返事はOKで |
| 見て | 人差し指と中指で自分の目を指し、対象を指す | 生き物を見つけたとき |
| 安全停止(3分) | 手のひらを水平にして、もう片方の手で指3本を立てる | 水深5mで3分。ゲージやコンピューターを指してもよい |
水面で使うサイン
| 意味 | サインの出し方 | ポイント |
|---|---|---|
| 水面でのOK | 両腕を頭上で大きく輪にする(片手なら手を頭に乗せる) | ボートやガイドに見せる用。水中のOKサインは遠くから見えない |
| 水面でのヘルプ | 片腕を大きく左右に振る、またはホイッスルを吹く | 波間では手だけだと見えにくい。大きく、繰り返す |
忘れやすい・混同しやすいダイビングサインの解説
一覧を見れば「知ってる」と思うサインばかりですが、実際の海で間違えやすいポイントがいくつかあります。
「OK」と「親指上げ=浮上」の混同
もっとも多いのがこれです。陸上では親指を立てるのは「いいね」「OK」の意味ですが、ダイビングでは親指上げは「浮上しよう」です。バディに「大丈夫?」と聞かれて反射的に親指を立ててしまうと、相手は「浮上したいのか」と受け取ります。
対策はシンプルで、「大丈夫?」には必ず輪のOKサインで返す、「浮上」を見たら同じ浮上サインを返してから一緒に上がる、この2つを習慣にすることです。
残圧の伝え方は流派が複数ある
「残圧はいくつ?」と聞かれたときの答え方には、代表的なものだけでも次のような違いがあります。
- 片手方式:指1本=10bar。100barは握りこぶし、その後に指の本数で10の位を示す(例:120bar=こぶし+指2本)
- 両手方式:片手で100の位、もう片方の手で10の位を示す
- 胸に当てる方式:指を胸に当てて数を示す(1本=10bar、指5本を横にして50など)
- ゲージを見せる:数字を示す代わりに、残圧計そのものを相手に向ける
同じ「指2本」でも、片手方式なら「20bar」、別の流派なら「120bar」や「200bar」と読める可能性があります。迷ったらゲージを直接見せるのが一番確実です。
「問題あり」のあとに部位を示す
手を揺らす「問題あり」のサインだけでは、バディは何が起きているのかわかりません。「問題あり」→「部位を指さす」をセットにしましょう。耳を指せば耳抜き、胸を指せば呼吸の違和感、足を指せば足のつり、マスクを指せば浸水、というように伝わります。
生き物サインを知っておくと水中がもっと楽しくなる
安全のためのサインに比べると優先度は下がりますが、生き物サインを共有しておくと「見て」だけでは伝わらない情報が伝わり、ダイビングが格段に楽しくなります。よく使われるものをいくつか挙げます。
- マンタ:両腕を広げてゆっくり上下に羽ばたかせる
- ウミガメ:片手を握って甲羅に見立て、もう片方の手を重ねて指を交互に動かす(または両手を重ねて親指を動かす)
- サメ:手のひらを立てて頭の上に乗せる(背びれ)
- ウツボ:手首から先を蛇のようにくねらせる、または手で口をパクパクさせる
初対面のバディとは潜る前にサインをすり合わせる
ここまで読むとわかるように、ハンドシグナルは「万国共通」に見えて、細部には個人差・流派差があります。いつものバディなら阿吽の呼吸で済むことも、初対面のバディとは通じない前提で考えたほうが安全です。
すり合わせるべき項目
- 残圧の伝え方:片手方式か、両手か、ゲージを見せるか。この記事の表を見ながら「自分はこう出す」と実演して合わせる
- 折り返し残圧と浮上開始残圧:ガスルール(1/2・1/3・オールユーザブル)を選んで計算し、「125barで折り返し、70barで浮上開始」のように具体的な数字で決める(計算方法はダイブプランの立て方を参照)。
- はぐれたときのルール:「1分探して見つからなければ浮上」など、講習で習った標準手順をお互いに確認
これらはバディチェック(BWRAF)の流れの中で一緒にやってしまうのがおすすめです。器材の確認をしながら「残圧はこう出すね」「折り返しは125barで」と口に出すだけで、5分もかかりません。
初対面のバディとの潜り方全般については、初対面バディとの潜り方でも詳しく解説しています。サインの確認は、そのなかでも最優先の項目です。
ナイトダイビングや視界不良時のライトシグナル
夜間や濁った海では、手の形そのものが見えません。この場合はライトを使ったシグナルに切り替えます。基本は次の3つです。
- OK/大丈夫?:ライトの光で海底や壁にゆっくり大きな円を描く
- 注意/問題あり/こっちを見て:光を左右に大きく振る(陸上でいう「おーい」に相当)
- 相手に手のサインを見せる:自分の手を自分のライトで照らして、通常のハンドシグナルを出す
やってはいけないのが、相手の顔にライトを直接向けることです。暗順応(暗さに目が慣れた状態)が壊れて、しばらく何も見えなくなります。相手に合図したいときは、相手の手元や、相手の視線の先の海底を照らすのがマナーです。
また、ナイトダイビングでは「バディの位置」がライトの光でしかわかりません。バディとの距離は昼間より近く(手が届く程度)保ち、定期的に光の円でOKを確認し合いましょう。ナイトダイビングは認定を受けた範囲内で行い、初めてならガイド付きでの参加をおすすめします。
サインが伝わらないときのコツ
サインは正しく出していても、そもそも相手が見ていなければ意味がありません。伝わらないときは、以下の順で試してみてください。
- 相手の視界に入る:バディの横や後ろから出しても見えません。まず正面に回り込む。距離があれば、タンクをナイフやシグナルバンガーで叩いて音を出す、フィンを軽く触るなどで注意を引く
- ゆっくり、大きく:慌てると小さく速くなりがち。胸の前で、ゆっくり、はっきりと。
- 返事をもらうまで繰り返す:「OK?」には「OK」、「浮上」には「浮上」が返ってくるまでが1セット。返事がなければもう一度
- スレートを使う:数字や複雑な内容はハンドシグナルでは限界があります。水中スレート(ノート)を持っていれば、「右耳が痛い」「30barしかない」と書くだけで確実に伝わります。
それでも伝わらず、自分の残圧や体調に関わることなら、バディの手を取って一緒に浮上する判断もあります。基本的な安全ルールはダイビングの安全ルールにまとめていますので、合わせて確認してください。
よくある質問
Q. ハンドシグナルは講習団体(PADI、NAUI、SSIなど)によって違いますか?
A. 基本サイン(OK、浮上、潜降、残圧、エア切れなど)はほぼ共通で、団体が違っても通じます。ただし残圧の伝え方や生き物サインには差があり、同じ団体でもインストラクターやショップによって教え方が異なることがあります。初対面のバディとはブリーフィングで実際に手を動かして確認するのが確実です。
Q. 残圧を聞かれたとき、数字で答えるのとゲージを見せるのはどちらがよいですか?
A. 事前に伝え方を取り決めていれば数字のサインで問題ありませんが、少しでも不安があればゲージを直接見せるのが最も誤解のない方法です。とくに残圧が少なくなってきたとき(70bar以下など)は、数字サインに加えてゲージも見せると、バディが状況を正確に把握できます。
Q. サインを忘れてしまったら、どうすればいいですか?
A. 無理に思い出そうとするより、「問題あり」のサインを出してから該当する部位やゲージを指さす、あるいはスレートに書く、という方法で伝えられます。それでも伝わらず、自分の安全に関わることであれば、バディの手を取って「浮上」のサインを出し、一緒に安全に浮上してから水面で話しましょう。
まとめ
- 水中では声が使えないため、ハンドシグナルがバディとの唯一の確実な連絡手段
- 「OK」「問題あり」「浮上」「潜降」「残圧はいくつ?」「エアがない」の6つは必ずとっさに出せるように
- 親指上げは「OK」ではなく「浮上」。「大丈夫?」には輪のOKサインで返す
- 残圧の伝え方は流派があるので、潜る前にバディと実演して取り決める。迷ったらゲージを見せる
- 初対面バディとは、バディチェックと合わせて残圧の伝え方・折り返し残圧・はぐれたときの手順を確認
ハンドシグナルは、知識としてはシンプルですが、実際の海で「迷わず出せる」「正しく受け取れる」かどうかは、事前の確認と慣れで大きく変わります。次のダイビングでは、エントリー前の1〜2分をバディとのサイン確認に使ってみてください。それだけで水中の安心感が違ってきます。